はどこかで感じていた。
 
 
彼等との別れは近い。
 
 
、花言葉ってね実は“呪い”でもあるんですって。でも、その呪いに縋ってでも永遠の愛や友情を望む・・・それって素敵なことだと思わない?」
「素敵・・かな?」
「ええ、私は素敵だと思っちゃったわ」
 
 
リリーは“女神の微笑み”を浮かべる。
には“沈黙の少女”と言う異名が存在していたが、最近新たな異名が誕生したのだ。そのことは本人は全く知らないのだが、確実にその異名は広まっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
強く吹く風 ありがとうを伝えて
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ねぇ、見て。あの組み合わせ・・・素敵ね」


ハッフルパフの数名がとリリーの組み合わせを見て、自然と零した言葉。それに同意するように頷く友人の頭の中にも同じ言葉が浮かんでいた。


“微笑みの女神”


「リリー・エバンズが“女神の微笑み”だったら、は“微笑みの女神”だな!」そう言ったのが誰なのかは分からないが、それは確実にホグワーツに広まったのだ。
はよく笑うようになった。そして、その笑顔は思わず見惚れるほど綺麗で可愛く、そして幸せそうなのだ。


「なんつーか・・・癒されるよな」
「ああ、癒されるな」


そう呟いた男子生徒を軽く睨みつけたのは、夏の暑さに苛々したからでも無ければ、悪戯が失敗したからでも無い。


「何が癒されるだ!」
「おいおい、良いじゃないか。素晴らしい成長だと思うよ」


苦笑を交えてジェームズがシリウスの肩に手を置くと、シリウスは静かに唸った。
ジェームズは風に揺れる青々とした木々を見つめ、『これが世に言う嫉妬ってやつだな』と一つ頷いた。




「えっと・・その、ありがとう。だけどシリウスをそう言う風には・・」
「・・だよな。絶対そうだと思った!お前、絶対、俺のことそういう目で見てないと思ってたんだよ!」
「う、うん・・」
「ま、良い!これから俺のことをそう言う対象として見てくれれば十分だ。お前が良いと思ったら言ってくれ。拒否は受け付けねぇ。お前は大人しく頷いとけ。誰も付き合えとは言ってねぇんだ。そー言う対象で考えて欲しいってだけだからな!」


ジェームズがここに居れば「これは世に言う告白ってやつさ、ピーター」と説明しただろう。
そう、は今現在告白された。そして、断り、何故だかシリウスはそれにすんなりと納得して今度は自分を男として見るようにと言ってきた。しかも、それを拒否することはダメだとまで言うのだ。
そして、本人は満足したのだろう。「じゃ、行くか」と歩き出した。


「あ、そうだ。これやろうと思ってたんだ」


ニッと笑い、の手に自然な動作で乗せたそれを見て「ちゃんと育てろよ」と今度こそ歩き出した。


「早く来いよ!乗り遅れちまうぞ」
「・・・・」


なんと、なんと・・・なんと自由気侭な、自分勝手な、我が道を行く人だろう。は人生初の告白されると言う行為に戸惑っているのに、本来なら緊張するはずの告白する側があの様だ。まるで戸惑っている自分が可笑しいとでも言われているような気分になって、は腑に落ちないながらもシリウスの後を追うように歩き出した。




「あら、それってアイビーじゃない。どうしたの?」
「シリウスに貰ったんだろ?あ、押し付けられたの方が正しいかな?」
「・・・貰ったですって・・・シリウスに」


シリウスと言うと同時にリリーは目を見開き、暫く考えるようにアイビーを見つめた。その心の内はリリーと恐らくジェームズのみが知っている。


結婚、誠実、信頼、永遠の愛・・・
「え?」
「なんでも無いわ。それにしても良い天気ね」


リリーの小さな呟きに思わず反応を示したのだが、リリーは大したことは言っていないとでも言うように微笑んでみせた。ジェームズがトランクを持ち上げて「最初と最後あたりがシリウスのメッセージかな」とクスッと笑った。
そんな所へ声を掛けたものが一人。ジェームズは顔を顰めたが、リリーが「行ってらっしゃいよ」とのトランクを受け取った。


「これ・・・何?」
「こっちでは手に入りにくいものだ。Ophiopogon japonicusと言う」
「・・・へ、へえ。そ、それで私にどうしろと?」
 
 
セブルスの発した、その植物の名前はには繰り返すことが出来なかった。なにやらややこしい名前だと言うことだけはわかった。
 
 
「・・・・日本では“リュウノヒゲ”と呼ばれるそうだ」
「リュウノヒゲ・・・・立派な名前だこと」
「・・・・・お前にやろう」
「え?・・・でも、いいよ、いいよ!だって貴重なんでしょ?!」


焦るに対して、セブルスは実に冷静に微かに顎を引いた。は、これが頷くの意味だと知ったのは最近のことだったが、周りと比較すれば素晴らしく早い方だった。勿論。が知るはずも無いのだけれど。
 
 
「貴重だ。だからこそ、責任を持って育てろ。お前が、育てろ」
「・・・む、無理だって」
「お前が水をやらなければ枯れる。お前が諦めれば枯れる。お前が育てれば成長する。・・・お前が必要なのだ、こいつには」
「・・・やっぱり、スネイプは優しいね」
「そんなことを言うのはお前くらいだ」
「それはスネイプが優しいのに隠すから」
 
 
お前が居なくなればコレは枯れる。お前を必要として居るモノが居るのだ。そう言葉にせず伝えてくれるセブルスにクスクスと笑う。そんなを視界に納め、こんな笑い方も出来るのかとセブルスは思った。彼女は実に表情豊かになったのだ。“沈黙の少女”が”微笑みの女神”に変わるくらいに成長したのだ。
 
 
「・・・セブルス・スネイプさん」
「なんだ、気色の悪い」
「酷いなぁ。ずっと傍に居てくれる?」
「・・・」
「付き合ってくれませんか?」
 
 
暑いはずなのに、暑くない。風が吹いているはずなのに、何も感じない。は表情に出さなかったが−−表情を隠すのは幸か不幸な慣れていたのだ−−かなり緊張していた。シリウスに告白された時なんかよりずっと、ずっと。
告白しようとは思っていなかった。それなのに、気付けば言葉は出ていて自身酷く驚いていた。きっと、セブルスの方が緊張してないんだろうな、と思うと自然と笑みが零れた。
 
 
「考えておく」
「・・・・ありがとっ」
「本当に幸せそうに笑うやつだな」
 
 
シリウスと同じように、自然な流れでの手に“リュウノヒゲ”を置くと何も言葉を発することなく立ち去った。がその背中をどれほど嬉しそうに、幸せそうに見つめていたのか何て知るはずもなく。
 
 
ッ!ここに居たんだね」
「あ、うん!」
「機関車が来るみたいだね。音がする」
「本当?」
「あ、あの、これ・・こ、この前のクリスマスのしゃ、写真!」
「わぁ、ありがとう。ピーター」
 
 
まるで兄弟のようにやって来たリーマスとピーターにの瞳は優しく微笑む。ピーターから写真を受け取ろうと伸ばした手は、写真が指先に触れた瞬間「キャッ」と言う女の子の小さな驚きの声にピタリと動きを止めた。
 
 
「あっ」
 
 
それは決められたかのような風で、それは必然のような強風で、それは・・・
 
 
っ!」
 
 
ああ・・この光景に見覚えがある。
目の前に迫る機関車。だけど、あの写真は私には大切なもので。命よりもなんて言わないけれど、それでも大切で、何も考えずに飛び込んだ線路の上。周りの焦ったような声に、私は冷静に写真を拾い上げて、
 
 
別れを告げる風
 
 
「ありがと、みんな」
 
 
全てその一瞬で分かったのだ。帰る時だと。
 
 
 
 
 
 
 
 

別れは時に突然で、       >>>

 

 
 07'04.24     パチパチ・・・