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それはまだ癒奈が幼い頃の話。
小学校一年生で、遠足として訪れたのはどこにでもあるような動物園。 先生の後に続いて、小学生になったばかりの子供達はキャッキャッと騒ぎながら動物の絵が描かれた門を潜った。
「はーい、じゃあ先生から離れずに着いてきて下さいねー」
先生の明るい声に、生徒達も「はーい」と笑顔で手をピンッと伸ばす。 ぞろぞろと続く子供の列に、訪れている家族やカップルは思わず微笑んだ。 先生が檻の前で「これはおサルのモンタですよ」と説明すれば、子供は一斉に「モンター」と叫んだ。 癒奈もその中の一人で、先生が説明すれば動物に向かって呼びかける。 もちろん動物達が返事をするはずもなく、子供達は「こっち向いて」などと無理な願いを投げかけてみる。 隣の翠奈(スイナ)に「動物さん疲れてるのかな?」と質問すると、「そうかもしれないね。残念」と言われ「あ!癒奈ちゃんシマウマだよ!」と次の瞬間には残念そうな表情が消え失せた。
たくさんの動物を見て回った子供達はクタクタになり、先生の「では、ここでお弁当の時間にしまーす」と言う声には表情をぱっと明るくさせた。
「おいしー」 「あー、ピーマン入ってるぅ」
そんな声がそこら中から聞こえた。 一時間の昼食タイムは子供達には長すぎるもので、空になった弁当をカバンに詰め込むと、あちらこちらに散らばってまた動物達を見に行ってしまった。 先生達も目の届く範囲から子供達が居なくなっては困ると、急いで胃に食べ物を押し込み散らばった子供達に駆け寄った。
「私、トイレに行きたい」 「あ、私も行くー」 「じゃあ、一緒に行こう?」 「うん!」
癒奈と翠奈は友人二人を残して、先生が話していたトイレの方向へと走り出した。
「動物さん可愛いね」 「うん!でもね、お母さんが危険だから注意しなさいって言ってたよ」 「そうなの?」 「なんかね、ライオンさんとかトラさんには近づいちゃダメって」 「そっか。じゃあ、ライオンとトラさんには近づかなきゃ良いんだね」 「・・・・そうだと思う!」
トイレの帰り道、癒奈と翠奈は動物園の飼育員に出会った。 優しそうなお兄さんは、癒奈と翠奈に笑いかけて「おいで」と手招きした。
「二人とも時間はあるかい?」 「・・・・わかんない。でも、先生が笛吹いたら行かなくちゃ」 「うん。あの時計の針が12になったら笛を吹くって言ってた」 「・・・・あと十分くらいか・・・・二人とも、良いものを見せてあげるよ」
癒奈と翠奈は顔を見合わせ、どうしようかと迷った。 「大丈夫。すぐだよ。時間には絶対間に合うから」と飼育員のお兄さんが言うと、良いものが見たくないはずも無い二人は頷いて、お兄さんの後に続いた。
「・・・・・この子・・・なーに?」
癒奈はお兄さんが抱きかかえている動物を見て呟いた。 隣で翠奈も同じように抱えられた動物を見て不思議そうにしている。
「この子はライオンだよ。・・・・ほら、あれがお母さん」 「ライオン・・・・」 「ライオンはお母さんがダメって言った!!」 「あっ!」
翠奈が早口に叫ぶと、癒奈も目を見開き頷いた。 可愛らしい顔をしていてもライオンであること間違いは無く、二人はゆっくりと後ずさった。 そんな二人にお兄さんは苦笑しながら「大丈夫だよ」と口を開いた。
「確かにライオンは危険だけど、この子はまだ子供だよ。 君達よりもずっと小さい。赤ちゃんみたいなもんなんだ」 「赤ちゃん・・・?」 「そうだよ。可愛いだろ?こんなに小さい」 「・・・・・・でも・・・ライオンだし・・・・」 「・・・・う〜ん・・・・まだ安全なんだよ。触ってみないかい?」 「!?」
翠奈は勢いよく首を横に振った。 癒奈は隣で暫くジッとライオンの子供を見続けて、ゆっくりと近づき始めた。
「癒奈ちゃん!?ダメだよ」
癒奈は翠奈の声を無視してそっとライオンの頭を撫ぜてやった。 目を細めたライオンの赤ちゃんはとても可愛いものだった。
「大丈夫だよ」 「・・・・・・うん」
翠奈もそっと近づき、ゆっくり恐る恐る頭を撫ぜてやった。 再び目を細める可愛らしさに思わず「可愛い」と漏らして、恥ずかしそうに頬を染めた。 虜になってしまった翠奈は、ニコニコとライオンの赤ちゃんを撫ぜ「名前は?」「いつ生まれたの?」「男の子?女の子?」と飼育員のお兄さんに質問を繰り返した。 癒奈は、そっと二人と一匹から離れ近くの檻に近づいた。 そこは、普段見る檻とは違って檻の外側に柵が無く動物まで檻を挟んだギリギリまで近づくことが出来るものだった。 何もいないらしい、檻に近づくとゴソッと何かが動き癒奈は動きを止め無意識に呼吸もやめた。 ゆっくりと動いたのは、先ほど見たライオンの何十倍もある大きなライオンで癒奈に気付くとそっと近づいてきた。 癒奈の手は檻を掴んだままで、指を動かすことも出来ず恐怖で体が震えた。
「っ・・・」
目の前にやってきたライオンは想像以上に大きく、可愛らしさなど感じるはずもなく癒奈の頬を涙が伝った。 癒奈まであと1cmと言うところまで近づいたライオンに、癒奈は「食べられる!」と思わず目を瞑った。
「・・・!?・・・・」
感じたのは痛みでは無く、温かなものだった。 癒奈の頬を流れていた涙はライオンによってゆっくりと舐め取られていた。意味が分からない癒奈は襲われなかった安心感からヘタリと座り込んだ。 ライオンは癒奈の瞳をジッと見ると、一度離した顔を再び近づけた。
「・・・・ライオン・・・さ・・・んっっっ!!? ・・・・・っ・・・・・んっ・・・・はぁ・・・・・うっ・・・・」
それはありえないこと。 ライオンがキスをするなんて。 しかし、癒奈はハッキリと覚えている。幻覚なんかじゃないことを。 確かに、あの時のキスは触れるようなものでは無く深いものだった。 口内に忍び込んできたのはライオンの舌であったはずなのに、今考えても可笑しなことなのだ。 あれほどまでに大きなライオンの舌が今よりも幼かった癒奈の口に入るはずが無い。だけど、何度考えてもそれは実際にあったことで嘘でも勘違いでも無かった。
癒奈がこの出来事を誰かに話すことはなかった。 なんとなく、誰にも話すべきでは無いと思ったから。
「え?・・・・ああ、あいつは優しいんだ。人を警戒しない。 でも、良い奴だから僕は好きなんだ」
「名前?・・・・ゴドリック・・・ゴドリックって言うんだよ」
覚えているのは、ゴドリックと言う名前とあの大きな瞳。 そっと離れたゴドリックの思わず目を離せなくなるほど優しい瞳を私はお兄さんが声を掛けるまで離せずに見続けていたのだ。 ピィーーーと響いた笛の音に、慌ててお礼を告げてその場を離れようとした。 その瞬間、聞こえたのは優しい少し擦れた声だった。
「いつまでも待っている」
「え?」 「ん?どうかしたのかい?」 「・・・・・ううん。なんでもない」
慌てて首を振って、チラリとゴドリックを見ると目が合った。 優し気の瞳はどこか悲しそうで、なんだか申し訳無かった。
「癒奈ちゃん!」 「あ、うん!」
翠奈ちゃんの呼ぶ声に急いで返事をして、その場から走り出した。 先生を中心に集まっている生徒達に私達も紛れて、その後も動物園を見て回った。 ライオンが何匹も居て、皆が興奮していたけれど私はひたすらゴドリックを探していた。 だけど、その中にはゴドリックは居なかった。きっと、あの赤ん坊の居た場所に今も居るんだろう。 どんな動物を見ても、その後の私は興奮することも呼びかけることもしなかった。 翠奈ちゃんが心配してくれたけれど、「平気だよ」と返し続けた。
動物園に別れを告げるとき、長く切なげな遠吠えが聞こえた。 どの動物かもライオンのものなのかも分からなかった。 だけど、私はゴドリックだと思わずにいられなくって思わず泣いてしまった。また心配してくれた翠奈ちゃんにも、慌ててやってきた先生にも何か答えることが出来るはずも無くただただゴドリックの瞳を思い出して泣き続けた。
再び、動物園を訪れた時にはゴドリックは居なかった。 「他の動物園に移ってしまったんだ」残念そうにお兄さんが言った言葉。 泣くことはしなかったけれど、「もう一度会いたかった」その思いが何度も繰り返された。
「ゴドリック・・・・・・」
一週間前に届いたホグワーツからの入学許可書。 その後、お母さんにもらったホグワーツの歴史。
「ヘルガ・ハッフルパフ。ロウェナ・レイブンクロー。サラザール・スリザリン。・・・・・・・・・・ゴドリック・グリフィンドール・・・・。 ・・・・グリフィンドール・・・・ゴドリック・・・・まさかね・・・・」
十一歳の私に届いた入学許可書は、私に大きな情報を与えた。 ずっと昔の人間。ホグワーツの創設者の一人。 私がゴドリックと出会ったのは五年前のこと。ありえない。 だけど・・・・・
「グリフィンドールが獅子なのは・・・・偶然ってこと?」
十分ありえる可能性じゃないか。 でも、偶然じゃなかったら?もし、あのライオンが繋がっていたら? 私は、ホグワーツへの入学が待ち遠しくて仕方なかった。
終わり?続く?・・・・どうしよう・・・・アンケートの結果次第です。 正直、ちょーーーっと夢見たもんで書きました。 どんな夢見てんだよ!?って感じですが。。。 見ちゃったもんは仕方ないですよ。 最初はオリジナルにしようかなぁって思ったんですけど、ライオンってのも何か運命かもって思って偶然にもグリフィンドールが獅子だったわけで繋げちゃいましたよ。 この、小説ありえませんが・・・・ありえない世界を突き通します(殴
ってか、夢でそういうの見た時点自分どうかと思ったんですけどね・・・
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