快斗と別れ、は近くの空いたベンチを見つけるとのろりと腰を下ろした。
目の前を過ぎ去る人は皆笑顔で、の気持ちとは真逆だった。


「・・・・・・」

じっと見つめる先には手首にはめられたIDと言う名の時限爆弾。
外すことも出来ない。確か、後々警察がやってきてくれるはずだったかなとは記憶を探る。
しかし爆弾であることは隠して警察は動いていたはずで、外してもらえる可能性は極めて低いのだろうと淡い期待も直ぐに消えた。
賑やかな明るい声の中で喧嘩腰の口調が聞こえは顏を上げた。
こんな場所でも喧嘩はあるもんだなと声の主を探してみて、ハッとした。

「なんでよ!誘ったのはそっちやろ!――もぉ・・・、ほんまに直ぐやんな?――こんなとこ一人で楽しめる訳無いやん!」

関東では目立つその口調。
可愛らしく着飾って居るにも関わらず、眉間には皺が寄り、苛々して居るのが遠目でもはっきりわかった。
遠山和葉、その人は最後に「平次の阿呆!」と怒鳴りつけると、荒々しく携帯を鞄に仕舞い込んだ。

「あの子も人質だったか」

服部平次とコナンが一緒に動くのは覚えていたが、確かに彼が動く理由が必要であれば、それは彼女しか居なかった。
は、彼女の手首にも自分と同じ其れが嵌っているのを見て深い溜息を吐いた。

「どうしよう・・・」

快斗に心配せず遊んでいろとは言われても、に遊べる様な余裕は無かった。
時限爆弾を腕につけて、一体どうやって楽しめと言うのだとは空を仰いだ。

(快斗君と楽しみたかっただけなのになー)

彼は無事にコナンと合流出来たのだろうか。は携帯を開き、メール作成画面を開いた。

「・・・迷惑だな」

彼は今頃必死に動いてくれているはずだ。
ここで何も出来ずに座っている自分がメールを送れば気を削がれるだけだろう。
画面を閉じて、鞄へ戻した瞬間、ブーッと携帯が震え、は慌てて画面を確認した。
メール:1件の文字に素早く受信ボックスを開き、宛名の名前にドキリと心臓が跳ねた。

【探偵ボウズは見つけた。大阪の探偵も一緒だ。暫くは尾行。また報告する。】

簡潔に要件をまとめたメールは快斗からのもので、は合流出来たことにほっとすると同時に、快斗が危険に巻き込まれることに顔を歪めた。
は意を決して立ち上がり、目的は無かったが園内を歩き回ることにした。

「もし蘭ちゃん達と会えたら合流しよう」

確か夜まで此処から出ることは出来ないはずだし急いで回る必要も無いだろうなとは近くの土産ショップへ足を踏み入れた。
マスコットキャラクターのグッズが並ぶ店内をじっくりと見て回り、職場への土産と今頑張ってくれている快斗への土産を探した。

「快斗君って、こう言うの好きかな?無難に食べ物が良いかな・・・」

ストラップが定番にも思えたが、貰った以上はつけない訳にはいかないと言う気の遣われ方をされそうで却下して、次にボールペンを手に取る。ペンならば貰って困ることは無いだろうが、果たしてこのしっかりと描かれたキャラクターを好んでくれるのかには分からなかった。ならば食べれば無くなってしまう食べ物が一番では無かろうかとクッキーやチョコレートが並ぶ棚に移動して幾つか手に取ってみるが、試食品も無く味をイメージすることしか出来ず微妙な味だったら嫌だなとクッキーの箱を棚に戻した。

「何が良いんだろうなー」

きっと何を上げても喜んでくれるだろうが、出来ればちゃんと気に入るものを上げたいとは再び店内を見て回った。
バッグやマグカップ、弁当箱にキーホルダー。候補に挙げては何度も取り消した。

【くれぐれも気を付けて。報告は無理しなくて大丈夫だよ。】

メールを打って、画面が確実に真っ白になる分の改行を入れて更に文章を追加した。

【お土産何が良い?】

お土産どころの状況じゃないだろと自分で自分に突っ込みを入れてメールを送信した。
もう暫く考えてみようとはペットボトルを一本だけ購入してショップを出た。
外に出ると日差しの強さには目を細め、近くの時計を探せば、正午を過ぎており太陽の位置も随分高かった。

「お昼か・・・」

目の前を走り去った子供の「お腹空いたー!」の言葉に何か食べるべきだろうかと考える。
時刻は昼時で、今何かを食べようとすれば一番混み合っている時間だろうと推測し、は時間をずらせば良いかと鞄からパンフレットを取り出した。



***



は昼食のピークが過ぎた頃、適当に何を食べようかと考え、香りが食欲を誘うカレーを選ぶと周りがカップルや家族連れの中、気にする事無く遅めの昼食を済ませた。
ゆっくりと時間をかけ完食したその時、園内放送が流れた。

『――よりお越しの毛利蘭様、お連れの遠山和葉様、いらっしゃいましたら、至急医務室までお越しください』
「あっ・・・」

何となく耳を傾けていた放送から聞こえたのは、偶然にもの探している相手の名前だった。
呼び出されたならば其処へ行けば会えるだろうともパンフレットから医務室を探し出すとルートを確認して歩き出した。

「此処、だよね?」

勝手に入って良いものだろうかと迷ったものの、医務室は用事がある者が訪れる場所なのだから問題ないだろうとはドアを数回ノックすると、そっと押し開けた。

「すみませーん」
「はい、どうかしました?」
「あ、いえ知り合いが居るんじゃないかって・・・」

そう言いかけたところで、は奥に居る蘭や子供達の姿を見つけた。
その様子に、納得した医務室の先生はどうぞとを奥へと通した。

さん!どうして此処に?」

に真っ先に気付いた蘭が驚きに声を上げ、それに釣られて皆の目がに集まった。
ベッドに横になっている灰原を確認して、は曖昧に笑った。

「放送聞いて、蘭ちゃん呼ばれてたから何かあったのかなって思って」
「え、態々来てくれたんですか?」
「うん・・・哀ちゃん、どうかしたの?」
「軽い熱中症みたいなんです」
「そうなの?大丈夫?水分とか摂った?」
「・・・大丈夫」

布団の中から少しだけ顏を覗かせて返された言葉にはほっと胸を撫で下ろした。

「ねぇ蘭ちゃん、この人・・・」
「ああ、えっと紹介するね。さん、お花屋さんで働いてて色々とお世話になってるの」
「そうなんや!初めまして、うち遠山和葉言います!」
「初めまして、和葉ちゃんって呼んで良いかな?」
「勿論!――さんは彼氏と一緒に来たんですか?」

元気に挨拶してくれる和葉にも笑顔を返した。
人懐っこい笑顔に、率先して話を進めてくれる和葉には好印象を持った。
そしてズバリと聞いてきた質問に乾いた笑いを返すと、蘭が不思議そうに此方を向いた。

「あれ・・・連れの人まだ来てないんですか?」
「いや、それが・・・来れなくなっちゃって」

おずおずと言い出せば、蘭の目が見開かれた。

「え・・・、それじゃあ今までずっと一人で?」
「うん、まあブラーッとね」
「連絡くれれば一緒に過ごせたのに・・・」
「いやいや、私も私でお土産みたりしてたしさ」
「何なん?さん一人なん?それやったら私らと一緒に過ごしたらええやん!」

和葉の申し出には有難く乗っかると、灰原の体調が良くなるまでは此処から離れられないと言われ、問題無いと暫くは医務室に居座ることが決定した。
それから人数分の椅子を用意して貰うと、子供達はパンフレットを広げ出し、夜のパレードの時刻をチェックするとわいわいと話しに華を咲かせる。
で、蘭や和葉からの質問に答えつつ、どうしても持って行きたがる彼氏や好みのタイプについて半笑いで答えていった。
三十分程経った頃だった。医務室の外を通りがかった人物の声に気付いた蘭は「目暮警部・・・」と立ち上がり挨拶に行くと出て行くと、それに和葉も続いた。

「じゃあ俺、ちょっとスーパースネークに乗って来るから!」

そう言って元太が医務室を出て行った瞬間、今まで大人しく寝ていた灰原が慌てて起き上がり、彼を止めるようにと残された光彦と歩美に頼んだ。二人は直ぐに慌てて元太を追いかけ外へ出て行った。

「ちょっと席外しますが直ぐに戻りますので」
「あ、はい」

更に追い打ちをかけるように先生までも立ち去り、医務室が急に静寂に包まれた。
その時、の鞄から音楽が鳴り響き、ハッとして携帯を取り出すとチラリと灰原の様子を伺った。
カチリと噛み合った視線には息を飲んだ。

「・・・さんは、来れなかった人のIDどうしたの?」
「えっ、あ、・・・持ってるよ!無くさない様に鞄にしまってあるの」
「そう・・・」

言って視線を伏せた灰原にも口を噤んだ。

「あの・・・、大丈夫だよ。私は外出ちゃ行けないの知ってるから」
「えっ」

言おうか言いまいか迷った末、は口を開いた。
恐らく灰原しか知らされていない腕に嵌められた爆弾の事をは遠回りに知っていると伝えた。

「聞いたの?」
「うん、私と友人で別行動の予定だったからさ。毛利さんから連絡があって、兎に角ミラクルランドから出るなって言われたけど、意味分からなくて理由を問い質したら・・・ね」
「そう・・・」
「だから、私も皆の事注意しておくから哀ちゃんも無理しないでね」
「・・・ありがとう」
「御礼言われるようなことじゃないよ!」

にこりと灰原に笑いかけ、タイミング良く戻ってきた先生と入れ替わるようにお手洗いへと席を立った。
は廊下に出て直ぐに携帯を開き、メールを確認した。

【今から学食でカレー食べるよ。さんも何か食べた?】

「一緒じゃん」と呟き、は返信しようとボタンを押しかけ手を止めた。
まさかと思い、ボタンを操作し画面を下へと動かせば其処にはやはり文章があった。

【俺のこと考えて選んでくれるだけでじゅーぶん♪】

緊迫感がまるで無い。は心の中で呟いた。
いや、敢えて緊迫感を出さないのかと快斗の性格を考え思い直した。

「何でも良いが一番困るけど、この返し方は卑怯だなー」

それでも、大変なのは明らかに快斗の方なのに気を遣っていつもと変わらない調子でメールを送ってくれる彼に思わず頬が緩む。
これは気合いを入れてお土産を選ばなければとは口元に弧を描いた。





(喜んでもらえる何かを見つけてやろうじゃん!)






2013.03.05
快斗が居ないので話が進む進む。
しかし鎮魂歌は時間がしっかり決まって進んでて時間を合わせる為に何度も書き直しました。
最初から確認しとけって話ですがね。

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