目の前の対極的な二人を見詰め、はチーズバーガーに齧り付いた。

「それ全部食べれるの?」
「当たり前」

平然と答えた火神の目の前には山の様に積まれたハンバーガー。は沈黙しか返せなかった。
なんちゅー量食べるんだ、こいつ。――とは言えるはずも無かった。
火神の隣で控えめにハンバーガーに齧り付いた黒子はと目が合うと思い出したと言わんばかりに口を開いた。

さんのことを紹介したい人が居るんですが良いですか?」

そう言われてもには何のことか分からず食べる手を止めて黒子の次の言葉を待った。
しかし、口を開いたのは黒子では無かった。

「ああ、こいつが海常の知り合いなのか」
「そうです」

二人にはこれで十分伝わっていたようだがには相変わらずさっぱり理解出来なかった。
は火神の隣にある大きめのバッグを見詰めた。
休日である今日、は図書館へ向かっていた。
その途中で通りがかった公園の一角に見たことのある姿を見つけ足を止めたのだ。
特に急ぐことも無く、激しく動き回る二人に近寄るとその様子を暫く眺めていた。

「黒子くーん」

そう呼びかけたのは火神がシュートを決めて直ぐのことだった。
の声に気付いた二人は同時に振り向き、誰だと眉を潜める火神とは裏腹に黒子は直ぐに駆け出しの近くまでやってきた。
それから、聞きたいことがあると口を開いたに、黒子が同じように「僕も聞きたいことがあるんです」と言ったかと思うと、離れた場所で此方の様子を伺っていた巨人――はそう思った――を呼び寄せ、近くのマジバへ向かうことになった。
その道中、巨人の名前が火神大我だと発覚し黒子と同じバスケ部だと紹介された。

さんは黄瀬君を知っていますか?」

黒子の声には数回瞬きをした。
黄瀬、それはまさにが黒子に聞きたかった人物の名前だった。

「うん、知ってるけど」
「そうですか。その黄瀬君にさんを紹介したいんですが良いですか?」
「え、何で?」
「なんでもマネージャー候補探してるらしいぜ。で、黒子に黄瀬が知り合い居ないかって言われてあんたが候補に上がったんだよ」
「なんで?!」
「僕の海常の知り合いは黄瀬君とさんだけですので」

淡々と告げる黒子に、は口があんぐりだ。

「でも私を紹介する必要無いでしょ。マネージャーとか無理だし!お断りしてよ!」
「…そうですか、分かりました」
「え、良いの?」
「はい、許可が出ないのであれば勝手には教えられませんから」
「あ、そう…」

あっさりと引き下がった黒子には勢いで浮いていた腰をそろりと戻した。
四つ目のハンバーガーを食べ終えた火神が「名前くらい教えても良いじゃねーか」と無責任な発言をしてみせ、は初対面にも関わらず火神に冷たい視線を送った。

「本人が嫌がるならば教えるべきでは無いです。――それで、さんの聞きたいことって何ですか?」

火神の発言をきっちりと正し、黒子はを見遣った。
紳士的だなーとは感心して黒子の様子を見守っていたが、視線を向けられもぞりと姿勢を正した。

「あのね、黄瀬君…って、帝光中なのかな?」
「は?」

驚きの声を上げたのは火神だった。
何言ってるんだと言わんばかりの表情に、は黒子の答えに察しが付いた。

「黄瀬君は帝光中です。そして、バスケ部でしたよ」
「あ、そうなんだ」
「…なんで知らねーんだよ」
「興味無かったんだもん」

火神の言葉には素っ気なく返した。

「でもよ、あいつもキセキの世代の一人だろ」
「そのキセキの世代って言うのも知らなかったの。そもそもバスケ部では当たり前かもだけどバスケ知らない人はキセキの世代なんて言うもの知らないでしょ」
「ええ、そうだと思います――ただ、黄瀬君はバスケ部と言うことを除いても目立ってました」
「うん、だから何となく居たような気はしたんだよ」
「居たような気がする程度なのかよ」

一々人の神経を逆撫でするような火神に、は思わず眉間に皺を寄せる。
そんなに気付いた黒子は「火神君…」と静かに口を開いた。

「何だ?」
「人の好みは様々ですし、火神君だって何にでも興味は無いでしょ。口出しし過ぎです」
「…そうかぁ?」
「黒子君…」
「はい」
「モテない?」
「……モテないとは」
「そんなに気の利く性格ならモテるだろうなーってこと。黒子君ってモテないの?って意味」
「モテると感じたことはありません」

影の薄さ故かと思いつつも、もし黒子が一般的な存在感のある男子ならばさぞモテたのでは無いかと考える。
そして、これが自然で無意識なのだから厄介な男になっていたのかもしれないとも考えられて、黒子は影が薄くてこそなのだろうと勝手に納得した。

「こいつはモテねぇだろ、そもそも存在を忘れられがちだしよ」
「火神君はモテないね――無神経だもん」

はぁ?と声を荒げた火神からふいっと視線を外し、チーズバーガーの最後の一口を食べた。

「あ、そうだった。黒子君、メアド教えてくれない?」
「…はい」
「ありがとー。また何か聞きたいことあったらメールするね!」

手早くメアド交換を済ませ、はお礼を述べる。
それから、これから図書館へ行くのだと伝えると、それに黒子が反応した。

「図書館ですか」
「俺パス」
「え、黒子君も行く?」
「ええ、構いませんか?」
「う、うん、勿論」

それじゃあここで。と別れる予定だったは、予想外の黒子の返事に動揺した。
確かに彼はよく本を持ち歩いていた様な気がするとは頷きを返した。





さんは何を探しに行くんですか?」

問われたは、反対の通りのショップから視線を反らし黒子を見る。
少し唸り、今度の文化祭で華道部で取り組む内容を説明し、それに使えそうな資料を探すのだと簡単に伝えた。

「部活は楽しいですか?」
「うん、入って良かったと思ってる。黒子君はバスケ部楽し…」
「…?」
「この前さ、バスケ部の人たちが誠凛に負けたって言ってた。黒子君も試合出た?」
「はい、海常との練習試合ですよね?火神君がゴールを壊して、全面コートを借りて試合しました」
「ゴールを壊した?!え、ゴールってあの丸いやつだよね?」
「はい、それです」
「………意味分かんないんだけど」

足を止め唖然とするに、黒子は歩くことを施しつつ試合の大まかな流れを話して聞かせた。
話が進むほどの頭の中には疑問符が浮かんでいくが、そんなに黒子は丁寧に説明してやった。

「なんだか皆人間じゃないみたいだね…黒子君のそのパスも凄いんでしょ?」
「パスそのものが凄いと言う訳では無いですが、そう言ってしまう方が簡単だと思います」
「ふーん…黒子君も凄いけど、火神君も黄瀬君も人間離れしてるよね。一度見たらコピー出来るとか神様かよ」
「神様ですか――他のキセキのメンバーを見た時のさんの反応が気になります」
「え、他のもそんなに凄いの?黄瀬君が一番じゃなくて?」
「本人曰く、黄瀬君は一番下っ端らしいので」
「…未知過ぎて想像すら出来ないや」

頭を振ったに、黒子はくすりと小さく笑った。
「初めて見た時は皆同じ反応をしますよ。でも慣れてしまうんです」と抑揚無く告げる黒子には「慣れれることも凄いわ」と零すのだ。







2013.10.31
黒子の話し方は好きです。

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