「俺は部長の白石蔵ノ介や。君は?」
「財前・・・光っすわ」
「光か。ええ名前やな!」
『テニス命』そんなことを言い出しそうな人やと思った。
誰からも信頼される。きっとそんな人なんやろう。
「財前光って君やろ?なんや、噂になっとるで。期待しとるわ」
「・・・誰ですか?」
「小石川健二郎!いつも一緒に練習しとるやろ!」
「そうでしたっけ?」
「・・・っ!」
影の薄い人。
せやけど、気付けば副部長になっとたんや。
ほんまに縁の下の力持ちとはこう言う人のことなんやろな。
「おっ、そこの一年俺らの新作見とき!」
「は?」
「行くで!」
「千手観音!」
「・・・・」
「おいおい、無反応かいな!」
「きっとあまりの素晴らしさに声も出ぇへんのよ!」
兎に角ギャグ命。あ、違う。小春先輩命の一氏ユウジ。
そして、ふざけた格好ばっかりしながら、物凄いIQの持ち主の金色小春。
「財前!ダブルス組もうや!あ、帰りにたこ焼食い行くか?」
「・・・」
「めっちゃ美味いたこ焼屋出来たらしいで!楽しみや!そう言えば、ぜんざい美味い店見つけたで!」
「!」
馴れ馴れしくて、『ノースピードノーライフ』とか意味分からんこと言うとる忍足謙也。
そして、いつの間にか俺の好物を知っとった。
「辛い時は一度離れて見るのもええことや。見えてへんかったものも見えてくるかもしれへんで」
「師範・・・」
決して俺の心を乱すこと無くアドバイスをくれる。
必要な時に、そっと言葉をくれる。石田銀。
「なぁなぁ!勝負しようや!わいが買ったらたこ焼奢ってな!」
「嫌や言うとるやろ」
「勝負や!」
「人の話聞いとるんか・・・」
兎に角元気。テニスが大好き。たこ焼も大好き。
そして、皆が大好きな後輩。遠山金太郎。
「すまんっ・・・ぼーっとしとったばい」
「ええですよ、別に」
「それは?」
「ああ、オマケで貰ったんすわ・・・いります?」
「良かと?」
その巨体に似合わず、ジブリが好きらしい。
九州二翼とか呼ばれとって、今では才気渙発っちゅー無我の扉の一つを開いた千歳千里。
| 「財前、言うてええことあかんことがあるやろ」 「・・・すみません」 |
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| 「財前、お前それ癖になっとるで」 「ほんまですか?」 |
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| 「お前!師匠に向かって!!破門や!」 「弟子になった記憶無いっすわ」 |
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「ひーかーる君♪これ、似合う?」 「似合うんちゃいます?」 |
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|
「見てみぃ!この消しゴム!ええやろ」 「そうですね、どうでもええっすわ」 |
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「少し休んだらどないや?」 「まだ、いけますわ」 |
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| 「光ー!関東にはゴリラみたいな奴居るらしいで!」 「ああ、居りそうやな」 |
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|
「すまんね、負けてしまったばい」 「俺がやったかて、一緒の結果でしたよ」 |
「卒業おめでとうございます」
「おめでとー!」
テニスコートの一角で、俺は卒業証書と鞄を持った七人の先輩を見る。
俺の隣には、笑顔の金ちゃん。
涙なんて出てこん。一生の別れっちゅー訳でも無いんやし、また会おう思えば会える。
「どうせ、テニス馬鹿な人達ばっかりやから、しょっちゅう顔出しに来るんでしょ」
そう言えば、先輩らは顔を見合わせて確かにと笑う。
「せやけど、これからこの四天宝寺テニス部を引っ張って行くのは俺らや無い。財前、そして・・・金ちゃん。二人やで」
言われんでも分かっとる。
白石部長から渡された部長と言う名のバトン。俺は受け取ったんや。
「お前はぶっきら棒やから、部員の反感買うような態度取るんや無いで」
「・・・」
「財前」
「気をつけます」
俺は思わず副部長から視線を反らした。
皆はただ笑ってるだけやったけど、俺は痛い所を突かれたと思った。
「頼んだで、皆を」
「はい」
「金ちゃんも、もう一年や無いんやからな」
「分かっとる!ワイいつまでも子供ちゃうで!」
「頼もしいわ」
微笑ましく金ちゃんを見詰める先輩らに、この人ら金ちゃんから卒業出来るんやろかって不安に思ってまう。
「ほな、そろそろ行くわ」
「せやな」
最後の挨拶なんて、いつもと変わらず「じゃあな」や「またな」なんて在り来たりな言葉やった。
「行ってしもた・・・」
「そない悲しい顔する必要無いやろ」
「光は寂しく無いん?」
「寂しい?」
「せや、皆居らんようなってしまうんや。毎日一緒やったのに!」
「・・・毎日」
言われてみれば、テニス部に入ってからの毎日はほんまにあの人達と一緒やった。
顔合わさん日なんて無かったんや無いか?
「・・・メール?」
震える携帯をポケットから取り出せば、【新着メール 一件】の表示。
受信ボックスを開けば、そこには【忍足謙也】の文字。
タイトルには、
「勝ったもん勝ちや!・・・」
「頼んだで、天才!」
「勝手に人の携帯覗くんはええ趣味とは言えんわ、金ちゃん」
「添付ファイルなんなん?」
人の話を聞きもしない。大丈夫やろか、この先・・・。
「あっ・・・・」
開いた添付ファイルには、全国大会終了後に謙也さんが記念に言うて撮った写真。
俺の頭には謙也さんの手が乗っとって、その隣には写真からはみ出そうではみ出ないギリギリの千歳先輩。
「寂しい・・・有り得へんわ」
「光、泣いとるん?」
俺は携帯を閉じると、一つ深呼吸した。
「遠山・・・」
「なんや?」
「今年は、全国一位は俺らや」
「当たり前や!」
2010.01.28
ゆーさんが、漫画化してくれることを期待して!
2010.10.05 一部修正 >財前は「遠山」って呼ぶらしいよ!吃驚だね(・◇・)