千歳が四天テニス部にやってきた!






そいつの第一印象は兎に角『でかい』やった。

「初めまして、千歳千里です。九州の熊本から来ました」

軽く頭を下げた大男は、頭を下げても尚でかかった。
本来なら、ここで「よろしく」だの拍手で歓迎があるはずなんやろうけど、そんな素振りを見せる者は居らへんかった。
そして、そんな普通とは違う空気に気付いた俺達と同い年であるはずなのに、ありえなく長身なそいつは、周りを見渡し困ったように笑った。

「えっと・・・歓迎されとらんとかね・・・」

やたらボリュームのある髪型も、なかなかインパクトがある。
そんな頭を、掻きながらどうしたものかと考えるように空を見つめた。

「自分、めっちゃでかいな!何センチあるん?」

目をキラキラと輝かせ、興奮状態の一年。遠山金太郎が言った。
空を見つめていた千歳と言う男は、興味津々に己を見上げる金ちゃんに気付くとまた困ったように笑った。

「どぎゃんだろか・・・最後に測った時は190ば超えとった気がするばってん」
「190・・・190やって!大男や!」

嬉しそうにはしゃぐ金ちゃんに忍び寄るは、我等が部長。白石蔵ノ介。
猫のようにフワフワ揺れる髪の奥に狙いを定めると、一気に躊躇無くその包帯の巻かれた腕を振り下ろした。

ぎゃあっ!!・・・ったぁ〜!何するんや、白石!」
「金ちゃん、世の中にはルールがあるんや。会って早々、名前も名乗らんと身長聞いて喜ぶんはマナーがええとは言えへんで」
「・・・せやった!堪忍な!ワイ、遠山金太郎。宜しゅうな、千歳!」
「いきなり、すまんかったな。このゴンタクレは、これでもテニスの腕は相当でレギュラーや。で俺は白石蔵ノ介。部長や。宜しゅう」

いきなりの白石の脳天直撃のチョップに、千歳は驚きの表情を見せたが、周りの反応が日常茶飯事なんやと伝えており、それに気付くと面白そうに二人の遣り取りを眺め始めた。
そして、漸くの自己紹介に若干詰まりながらも「よろしく」を返すと、魔法でも解けたかのように各々が自己紹介を始めた。

「よしっ、ほな、後は頼んだでー。俺は、今から会議やから」

帽子を深く被り直しながら、振り向くことなく緩く手を振りテニスコートを後にするは、若干怪しいながらも確かに我がテニス部の監督であるオサムちゃんやった。
会議なんて嘘やろと思いつつも、いつものことやし気にも留めへんかったんやけど、ピタリと足を止めたオサムちゃんに思わず反応する。

「あ、そいつ、九州の二翼の一人な!強いでー!」

それは楽しそうに叫ぶと、今度こそ足を止めることなく姿を消した。
テニス部員が騒ぎ出すのと、千歳が額に手をやったのはほぼ同時だった。

「言わん約束、しとかなんかったばい」



これが、千歳千里と俺達との初めての出会い。



























今日は部活が早く終わった。
こんな日は、ゲーセン行ったり、ファミレス行ったりするんが習慣やった。

「なぁ、千歳も行こうや!」
「無駄やって、金ちゃん。そいつは誘いに乗ったこと一度も無いやん」

毎度懲りもせず千歳を誘う金ちゃんに俺は千歳と目を合わせること無くそう言ってやる。
それでも金ちゃんは、やたら千歳を誘いたがった。


千歳が転校してきて、早二ヶ月。
俺達は、何度となく千歳を色々な場所に誘った。せやけど、答えはいつも決まっていた。

「すまんばいね」

千歳は何かと理由をつけては俺達の誘いを断った。
戯れるのが苦手なのかは知らへんけど、ここまで誘って一度もYESを返さへん千歳に俺は不快感を抱き始めとった。
千歳は愛想が無い訳や無い。せやけど、深く関わろうとはせんタイプのようで、俺らとの関係も『テニス部』と言う枠からはみ出すことは無かった。
そないな人間が居るんは分かる。分かるんやけど、俺には理解できひん。


着替えを終えた銀に白石が、ゆっくりと近づいてくると金ちゃんは二人に助けを求めるように視線を送る。

「人にはそれぞれの生活があるんや。迷惑かけたらあきまへん」
「せやで。千歳とは次の機会に、な?」
「嫌やー!千歳とプリクラ撮んねん!」
「金ちゃん・・・我が儘はあかんで・・・」
「げっ・・毒手・・・」

ズルズルと後退する金ちゃんに、これで話が進むと俺は溜息を漏らした。
追い詰められた金ちゃんは、千歳の後ろに隠れると「千歳助けてや!」と叫び、その大きな体に完全に隠れてみせる。
助けるも何も、金ちゃんがそうなった原因は千歳にある気もするんやけど・・と俺は思う。

「・・・んー、プリクラ撮れば良かと?」
「・・・・・行くんか?」
「せや、プリクラ撮んねん!」

白石の動きが一瞬止まり、そして本気なのかと確かめれば千歳は無言で頷きを一つ返した。
と、同時に金ちゃんが千歳の首に飛びつき、千歳が盛大に咳き込み、再び白石の毒手に追いかけられると言う図が出来上がる。



「ほな、行こか」

白石の一言に、部室からレギュラーが続々と荷物を担ぎ出ていく。

「無理せんでええで?」
「無理はしとらんよ」

そんな二人の会話を背中に受けながら、俺も部室を後にした。






「これ!全員入れそうや!」
「全員はキツイんやない?」
「俺は小春とツーショットで・・・」
「全員揃ったんに全員や無かったら意味無いわ!」

半分、金ちゃんの勢いに押されるようにテニス部と言うこともあって、それなりにガタイのええ男共が狭い空間に体を寄せ合う。
ぎゅうぎゅうになった、その狭いボックスの中を覗き込む男。

「千歳も入らな!」
「ばってん、もう狭かよ」
「ええねん!全員で撮るんやから!」

さん・にっ・・

俺達の状況なんて知るはずも無く、カウントダウンが始まる。

「ごちゃごちゃ言わんと、入れや!」

白石が千歳の腕を引くのと、シャッター音が聞こえたのはほぼ同時やった。

「次、皆ピースやで!」
「なんで金ちゃんが仕切んねん!」
「小春、俺とダブルピースを!」

さん・にっ・いち

「ピース!」

カシャッ

叫んだのが誰やったのか分からへんかった。せやけど、皆がそれぞれにちゃんとピースしたんは、流石の条件反射と言えるんやろか。
勿論、浪速のスピードスターの俺はバッチリ決めたで。



「千歳・・・自分・・・」

出来上がったプリクラを眺めて白石が呟くと、「何、何?」と小春が覗き込み「きゃっ」と女みたいな声をあげる。

「千歳くんったら・・・可愛えわ〜」
「なっ、何や?!何が可愛えねん!」

慌ててユウジも奪うようにプリクラを見詰め、軽く目を見開き

「自分、決めたなー」

そう言ってプリクラを俺に回す。
そこに写っていたのは、あのバタバタした中でばっちりピースを決めている千歳だった。

「お前・・・意外とノリええんやな」
「ワイにも見せてや!!」

俺は素直に金ちゃんにプリクラを渡してやり、改めて千歳へ視線を戻す。

「プリクラなん、撮ったとは久しぶりばい」

そう答えた千歳は、どこか恥ずかしそうに頭を掻いた。




「つるむん嫌いとかや無かったんやな」
「・・・そぎゃん思われとったとね?そら危なかったばい」

千歳はケラケラと笑って、誘いを断っていた理由を話し出した。

「本当に用事があることもあっとばい?
ばってん、皆ば見とっと仲良かけん・・・俺が入って邪魔してしまいそうな気がして遠慮しとったったい」
「アホやん!」
「転校してきたばっかりの俺に気ば遣ってくれよっとだろうなって思ってな」
「考え過ぎやで、自分!」

千歳の広い背中を叩くと、「痛かー、俺の体はガラス細工とだけん優しくして欲しか」なんて下らない冗談を言うもんやから、「お前のどこがガラスやねん!こっちの手がガラス細工になるくらいやわ!」と突っ込んでしまった。



まぁ・・・これなら仲良くやっていけそうや。
千歳への気持ちが大きく変わった、赤い空の下。







2009.09.11

えぇっと・・これは、スピードスターの彼目線・・・のはず。はず。はず。
分からん!!難しい!謙也の口調って何ですかー?
「ちゅー話や!」とか入れる場所無かったよー!

無理無理無理ー。
初めて、普通の小説書きました。難しいね。
何が難しいって、全てがだよ!
四天メンバーの口調とかはこれから頑張って理解して行かなければってところです。
いざ書いてみると分かんないものですね。
千歳に関しては、熊本弁なので問題無いです。
そんなこんなで、訳わっかんないまとまり方になってしまいましたー。

因みに、ゆーさんの描いた【ピースする千歳】を見て思いついたものです。