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快斗との電話を終え、蘭の指示する場所に向かうとそこには予想通りのメンバーが揃っていた。
レストランの一角に集まっていた中でに気付いた和葉が大きく手を振った。
「さーん!こっちー!」
周りからの集まる視線に若干居心地悪くなったものの、少しだけ頭を下げるとそそくさと椅子と椅子の間を通り抜け皆のもとへ向かった。
「お帰りなさい、電話大丈夫でした?」
「あ、うん。大丈夫だよ、友人からだったし。それより事情聴取の方は?」
「私達が話したんでさんが特別話すことは無いと思うんですけど・・・目暮警部!さんにも話聞きます?」
「んっ?ああ、いや結構だ。もし気になる点などあったならば聞くが、どうかね?」
「・・・いえ、特には何も」
「そうか、ならば大丈夫だ。呼び出しておいてすまないが、要件は終わりだ」
「そうなんですか?」
「そうそう、で、これ目暮警部の奢りよ!」
園子は目の前の料理を示して笑顔を見せた。
えっと驚くに目暮警部は態とらしく笑い、「君達はお手柄だったからね」と頬を掻いた。
自分は何もやってはいないがとは思ったものの、ここはお言葉に甘えて置くべきだろうと御礼を言って目の前の料理に手をつけた。
***
料理もほとんど食べ終わり、デザートが運ばれてきた時のことだった。
はふっと周りの席が全て空席になっていることに気付いた。正確には自分達以外に客の姿が一切無かった。
それから、キッチンに戻ったきり出てくる気配の無いスタッフにも違和感を感じた。
「・・・」
「さん、どうかしたん?」
「えっ、ううん・・・ちょっとお手洗い行ってくる」
「あ、出てすぐ左ですよ」
「うん、分かった」
は鞄を持ち、お手洗いへ向かった。
本当は用事など無かったが、思わず不安を隠す為に吐いた嘘だった為形だけでもと席を離れた。
「・・・快斗君、大丈夫だよね」
携帯の時刻は21:51を表示しており、は言葉にならない思いと共に鞄を強く握り締めた。
絶対に助かると信じていても拭いきれない不安には体が震えた。
気付かれてはいけないのだと分かっていても、刻一刻と迫るタイムリミットに震えを止める術が思いつかなかった。
それでも、出来る限りの平然を装いは皆のもとに戻った。
「ねぇ、さん」
「・・・ん?」
「私と二人っきりであっちでお話ししましょう」
「え・・・」
「えー、何々!私もさんとお話ししたーい!」
「あら、私は二人っきりで話したいことがあるの。少し位譲ってくれない?」
「・・・じゃあ、どんな話したのか後で歩美にも教えてね?」
「ええ、良いわ――さ、あっちへ行きましょう」
灰原は歩美を上手くあしらい素早く立ち上がるとの手首を掴み少し痛い位の強さで引いた。
思わず勢いで立ち上がったは、そのまま導かれるままに席を移動した。
「酷い顔色してるわ。大丈夫よ、きっと助かるわ」
「・・・哀ちゃん」
気遣ってくれたのかと、は灰原に心から感謝した。
彼女の前でなら震えを我慢しなくても問題は無かった。
「あなたの友人って本当にただの用事で来れなくなったの?」
「どう言う意味?」
「・・・深い意味は無いわ、何でも無いの」
「彼が関わっていたとしても、絶対に悪い意味では関わってない」
「・・・そう、分かったわ」
灰原はIDに視線を落とすと、静かに笑った。
「もし間に合わなかったら貴方と色々と話したいわ、あっちの世界でね」
IDは21:59を示した。
は強く、強く手を握り締めた。
(一分!・・・快斗君っ!)
***
22時を無事に過ぎ、警察にIDを回収された。
そして、こんな時間にも関わらず鳴り響いた園内放送は子供達には嬉しくて堪らないプレゼントだった。
「スーパースネークに乗れるなんてラッキーですね!」
「しかも俺達の貸切だぜ!」
「やったー!」
素直に喜ぶ子供達を先頭にはスーパースネークのある場所へと移動した。
目的の場所にはコナンと服部が待機しており、コナンは少しからかわれていたがまんざらでも無さそうでは隠すこと無く笑った。
簡単にではあったが和葉から服部に紹介してもらい知り合いにもなれは嬉しかった。
「さん!」
「・・・えっ」
呼ばれた声に振り向けば、そこには見たことの無い男性が居た。
いや、はこの人物を知っていた。
「何や、自分いつの間にか消えた思ったらひょっこり戻ってきよって」
「僕は僕の仕事をやり遂げたまでだ。現に君達は無事にやり遂げた、そうだろう」
「なぁ、誰なん、この人」
「白馬探。俺等と同じ探偵や」
「俺等?」
「・・・あっ、いや、俺とかおっちゃんや!おっちゃん!」
「ふーん・・・で、なんでその探偵さんが此処に?」
「ああ、僕の大切な方が大変な目にあったと聞いたので、迎えに来たまでですよ」
そう言って白馬はの肩を抱いた。
唖然とする周りと同様にも声も出せずに固まっていた。
「・・・や、やっぱり彼氏やったんやー!」
「はっ、ち・・・違う!」
「もう、隠さんでもええですって!心配して来てくれるなんてええ彼氏さんや」
「ほんとっ!彼氏さんも一緒にスーパースネークだけでも楽しんだらどうですか?」
「だから彼氏じゃないし!――それに私は乗らないからね、スーパースネーク」
「えぇ!何でなん?」
「に、苦手だから・・・」
「そうなんや、ほな彼氏さんだけでも乗る?」
「いえ、僕も遠慮しておきます。皆さんの楽しむ姿を見物していますよ」
微笑んだ白馬に和葉と蘭は顏を見合わせ、肩を竦めた。
スーパースネークに乗り込み始めた子供達に気付き、は「ほら行っておいでよ」と声を掛けると皆は揃って歩き出した。
「あっ」
「ん?」
「ちょっと、行ってくる」
の隣で静かに皆の様子を見守っていた白馬が駆け出した。
スーパースネークの先頭を位置取っていた元太に近づくと、何事か言葉を交わし直ぐにのもとへ戻ってきた。
そして、手に持っているIDを持ち上げるとニッと白馬では無く快斗らしい笑みを見せた。
「回収してきた」
「・・・残ってたの?」
「そうみたい。あっぶねー。刑事さんに渡してくる」
「うん」
***
「面白かったー!」
「やっぱりスーパースネークが一番でしたね!」
はしゃぐ子供達は笑顔いっぱいで、もその笑顔につられた。
車に乗り込む姿を見送りながら、は手を振った。
「ねぇ、さん」
「コナン君、早く行かなきゃ置いて行かれるよ?」
「あのね、彼氏さんって何で来れなかったの?本当は朝から約束してたんでしょ?」
無邪気に疑問を問いかけるコナンだが、その瞳の奥は鋭い光を放ちは答えに迷った。
「江戸川コナン君、秘密があるからこそ人は魅力的なんだと思わないかい?」
「えー!分かんなーい!」
「・・・名探偵、これ以上この件に突っ込むようならお前の秘密を俺だってばらしかねないぜ?」
「っ・・・!」
「コナンくーん!行くよー!」
「ほら、皆が待っているようだ」
「・・・ごめんね、変なこと聞いちゃって!僕行くね。またね、さん!」
「う、うん、またねっ」
コナンが最後に乗り込むと車の扉は閉まり、は最後まで皆を見送った。
そして、完全に車の形が見えなくなり大きく息を吐いた。
「お疲れさん」
「快斗くん・・・、どうして態々変装してまで」
「そりゃあ早くさんの無事を確認したかったから」
「でもコナン君は気付いてたんじゃない?」
「ああ、でも今回の俺は名探偵の敵じゃ無かったからな」
「本当に最後までハラハラさせないでよ」
「ははっ、ごめん!」
「もうっ!――・・・有難う、無事に助けてくれて」
「・・・こちらこそ、無事でいてくれて有難う」
「・・・っ」
我慢しよう我慢しようと思っていたにも関わらず、無防備に両腕を広げた快斗には耐え切れずその胸元に飛び込んだ。強く強く抱きしめて、その人の温もりに漸く心からの安堵を感じることが出来た。
「お疲れ様、さん」
「快斗っ・・・く、んっ!」
(心から、心から、ありがとう、快斗君)
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