「あっらぁ・・・どうしたら良いんだろう、この物体・・・」 なんだかんだで、きっと興奮しているんでしょう。トリップと言う事柄に。 太陽もまだ顔を出す前に目が覚めた私。こんなこと、一年に一回あるかないか。 いや、あるんだけど・・・あってもそのまま布団に潜り込む訳。 でも、今日だけは違った。清々しい目覚めで、とりあえず朝一でシャワーを浴びて、お腹がギュ〜なんて鳴るもんだから朝食を求めて広いペンションを歩きまわることにした。 どっかに食べる場所くらいあんだろ、きっと。 窓の多いこのペンション。一瞬途切れては見える風景を楽しみながら、やはり慣れない風景に『トリップしたのか』としみじみと感じてみたり。 そんな、私の優雅な朝の散歩(探索含む)に、突如障害物が現れました。 まぁ、現れたと言うか・・・もともとあったから、私が運悪く出くわしたと言うところなのかしら? ただ、それでも障害物が無害そうだから幸運だ。 「ハイテンション少年・・・風邪ひくぞー」 そう呟いて、特に何もすることなく今はグッスリ廊下のど真ん中で寝て居るハイテンション少年の横を通り過ぎる。 なにがあって、彼はこんなところで寝ているのか。それは、・・・興味あるけど面倒なことになりそうだから忘れておこう。 「・・・さいてー」 「へへっ、おはよっ。ちゃん」 「ははっ、おはよう。ハイテンション。そして、再び寝ると良いよ」 「ううん、もうバッチリ寝たから俺すっげー元気!」 奴は確かに今の今までぐっすり寝息まで聞こえる程寝ていた。 なのに、何故・・・今奴は満面の笑みで私の洋服の裾を掴み立っているのだろうか。 このペンションの七不思議かしら? 「ちゃん何処いくの?」 「うーん、君が行きたく無い場所かな」 「えー、どこー?」 「うーん、どこだろうねー?」 「・・・ムー・・教えてくれないんなら、俺着いていく!」 「食べれるどこか」 「じゃあ、俺も一緒行く!」 え?今、教えないなら着いてくるって言いましたよね? なのに、教えても着いてくるって詐欺じゃないですか?・・・ん?詐欺? 「詐欺師ってニックネームを持つ人居なかったっけ?ハイテンション少年がそれ?」 「えー!!違うC−!俺、そんな変な名前お断り!」 「あ、違うんだ。ピッタリだよ」 「やーだー!それは、立海の仁王だよ!」 「・・・・あぁ、そりゃ納得。一番ピッタリ大賞だ」 確かに、銀なら詐欺師って感じだもんなー。なんで詐欺師だったか忘れたけど、きっとあの醸し出す胡散臭さだな。笑顔とか、口調とか、姿とか・・・全部胡散臭さの象徴だもんなー。 「ねー、ねー!ちゃん!」 「なにー?」 「朝ごはん、サンドウィッチにして外で食べない?」 「・・・えー・・・、うーん・・・、良いよ。付き合ってあげる」 「マジ?!じゃ、サンドウィッチ貰って、外行こう!」 手をガッチリ掴まれた私は、ハイテンション少年が進む道をただ黙々と着いていった。 どーでも良いけど、スキンシップ激しくね?この世界。 ***** 「美味C−!」 「うん、そうだね。美味しいわ」 ハイテンション少年に導かれやってきたのは、緑溢れる空気の澄んだ絶好のお食事ポイントでした。 うん、こりゃ来て良かった! 「あ、ハイテンション少年ってさー」 「なに、なにー?」 「・・いや、別に・・・」 「えー!言ってよ!気になるじゃん!」 「忘れて」 「無理ー!何?なーにー?」 この子・・・本当にチビッ子を象徴したような・・・いや、チビッ子が見た目だけ大きくなったような、見た目もチビッ子だけど、本当に本当に・・・チビッ子だわ。 「いや、どうでも良いことだけどさ。ハイテンション少年は名前で呼んでとか言わないんだなって思って」 「・・・?名前?」 「うん、リョーマとかそうだけど名前で呼べって言うし。でも、ハイテンション少年はそう言うこと口にしないなーって思いました」 サンドウィッチを流し込むようにオレンジジュースを口に含んだ彼は、もぐもぐ口を動かして胃に食べ物を押し込むとニッと笑ってみせ、 「うん、全然俺は嬉しいからそれで大丈夫」 「・・・ごめん、意味がわからない」 「あ・・・えっとねー、ちゃんが俺のことハイテンション少年って呼ぶけど、それはちゃんにとっては俺の名前になるでしょ?それだったら俺は問題無いの!」 「へぇ〜」 「でね、ハイテンション少年なんて呼ぶのはちゃんだけだかんね!だから、ちゃんだけが呼ぶ俺の名前なの!」 「だから、嬉しい・・・と?」 「そう!」 ・・・ヤバイ。ちょっと、この子・・・可愛いかもしれない。 なんか、ストライクゾーンに・・・いやいやいや・・・そんなはずない!だって、あの黒子とかの仲間だしね。 そうだよ、そうだよ! 「黒子の仲間なんかには惑わされない!」 「あっ!」 「なっ、なに?」 再び食事を再開したハイテンション少年が急に此方を向いて声を上げるものだから、流石に驚いてしまった。 もし手に持っていたジュースが紙パックじゃなくコップだったら間違いなく少量は零れていた位には驚いた。 「ちゃん、跡部のこと嫌ってる?」 「跡部って黒子?話の流れからすると」 「うん、そうそう」 「嫌いって言うか・・・うん、嫌い」 「あのねー、跡部はね、すんげー良い奴なんだよ!」 「へぇ」 「信じてないC−!跡部だけじゃなくて、皆良い奴!皆すっげーテニスうめぇの!仲間でライバル!」 「うん、そうらしいねー」 「俺ね、跡部居なかったらテニスやってなかった。跡部が部長だから俺、氷帝でテニスやってられんだ」 「・・・なんで?」 「跡部が部長だから!」 「答えになってないけど」 「だって、それが答えなんだって!」 「さようですか」 タイミング良く食べ終えた私は、立ち上がり「もう行くよ」と未だ座り込んでいるハイテンション少年に視線を送る。 彼は着いてくるつもりは無いらしく、見上げる形で私を見た。 「じゃーねー。良いスポットを教えてくれてありがと」 「・・・ちゃん!」 「はい?」 「テニス見に来てよ!俺ら、テニス今日もやるはずだから!」 「んー、気が向いたら?」 「絶対に見に来て!見たら分かる!跡部も忍足も、日吉も・・・みーんな、青学の奴等も立海の奴等もスゲーの!ちゃんならぜってぇ分かるから!来て!」 「・・・オーケー。そこまで言うなら行くよ。ジローの自慢の仲間とやらをシッカリ観察してみますよ」 「うん!待ってる!」 「じゃ、また後でね」 「後でねー!あと、ハイテンション少年でも良いかんねー」 「考えとくー」 既に歩き始めた私にジローは軽く叫ぶように付け加えた。 それに対して、なんともヤル気の無い声で答え、腕を上げ振り向かずに一時の別れに挨拶をした。 この世界、仲間とやらがとても大切らしい。良いと思います。そんな素敵な友情。 ほんと、羨ましいね。 |
待ってんかんねー!