今、思った! 「あんたら、そう言えばなんで私が抽選に当たってること知ってたの?」 「「「・・・・・」」」 「うぉーい・・・全員、揃いも揃って視線を逸らすな。私の目を見ろ!」 私が問うた相手は、メガネと銀だったのだけど・・・何故だか質問した途端その場に居た私と缶ジュース以外の全員が視線を逸らした。 どう言うことだ、これは。オイ。 「そこのリーダー、黒子。十文字以内で簡潔に答えよ」 「アーン?なんで俺が」 「あんたリーダーなんでしょ。アーン・黒子」 「・・・アーン・黒子?」 首を傾げたのはピョン太。不思議そうに「アーン・黒子」と繰り返す。そんなピョン太に「気にしたらあかんで、岳人」と首を振ったのはメガネ。ま・・・どっかの人みたいだもんね。アーン・黒子ってさ。 けど、そのアーン・黒子と名付けられた本人はそんなこと気にしていないのか敢えて無視しているのか軽く顔を顰め、 「・・・『仕組まれた抽選』だったからだよ」 これで満足か、と言いたげに答えた。満足するわけねぇだろ。 「・・・・・・・・帰る」 過去最高とも言える睨みを効かせ、黒子を見た。そんな私に黒子は居心地悪そうに視線を逸らし「・・・樺地」と呟く。すると、ヌゥさんは私をそっと地面へと下ろしてくれた。・・なんか、分からんがありがとうヌゥさん。 「・・・これって、帰って良いってことよね?君は自由の身だって言うことよね?」 今まで散々離してくれなかった癖に態度を180度変えるもんだから戸惑ってしまった。黒子は一度舌打ちをすると「幸村」と発する。幸村? 「・・・初めまして。僕は、幸村精市」 「・・・は、はぁ」 綺麗な人だなぁ・・と思いつつ、これで「僕は、佐藤健一」なんて名乗られるても可笑しな話だし、幸村であるのは当たり前だろうとか思った。正直、かなり捻くれた考えだと分かってる。自覚してる。 「まず、君をここまで拉致したことは謝るよ。ごめんね」 「・・・ええ、本当に。綺麗な顔してやることはやってますって感じですよね」 「・・・ま、否定は出来ないかな」 綺麗な顔がナンボのもんじゃい。私、綺麗より可愛いが好きですから。ええ、長太郎君とかね。うん。 とりあえず、礼儀は知っているらしいので幸村さんと呼ぶことにして・・・その幸村さんは申し訳無さそうに苦笑して「ちょっとだけ僕の話を聞いてもらえるかな?」そう言った。 イヤだ。けど、こうも丁寧にお願いされちゃ断れないよ。私ってそう言う人間なんですもん。 「・・ちょっと、だけならですよ?」 「ありがとう」 「・・・・・いい・・、え」 急に微笑むもんだから不覚にも言葉を失ってしまったじゃないか! 良いさ、ここまで来たんだ。正確には来させられたんだ!話くらいは聞いてやる。ちょっとだけね。ちょっとだけ。 「実は、僕達はテニスの王子様のキャラそのものなんだ」 「・・・ええ・・そうでしょうねぇ」 「・・うーん、さんと僕達の『キャラそのもの』には食い違いがあると思うんだけど・・・」 「俺から説明しよう」 「ああ、頼むよ」 どうも私と幸村さんの意見と言うか考え?には食い違いがあるらしい。それを上手く説明出来ないらしい幸村さんに救いの手を差し伸べたのは・・・細っ!すっごい目の細い人!多分、あの不二さん以上?! 正直・・・細目好きですけどね。なんか・・良いなって思いますけどさ。 「柳蓮ニだ。よろしく」 「・・どうも。です」 「少し話は長くなるが構わないか?」 「まぁ、ここは折れて差し上げましょう」 そう言うと、細目は満足そうに一つ頷いた。・・・ん?待て。・・・私、何故・・敬語?明らかに、私、年、上・・・よね? 「ちょっ、ちょっとストップ!」 「なんだ?」 「貴方方、中学生よね?」 「・・・ああ、そうだが」 「ですよね。いくら見た目がソレでも中学生であることは確かなわけよね!」 「見た目がソレとは?」 「そこはどーでも良いのよ!OK・・分かった。良い、ここでハッキリさせとく。私は、貴方達より年上。先輩。つまり、敬うべき存在な訳!OK?」 「ああ。それで話の続きだが−−」 「待て・・・分かってない。絶対に分かってない!」 今、私は言いました。「敬え」と。それに対して、「ああ。それで話の続きだが」ですと?ど・こ・に「敬い」があった?敬う語と書いて「敬語」はどこに行った?寧ろ、あった? 「・・・しつこいな。良いだろう」 「それで、話の続きなのですが・・・」 「これで満足か?」 「・・・満足って、あの喋ったの君じゃないですよね。明らかにその後ろの人ですよね?」 「・・面倒だ。説明はお前から頼む」 「分かりました」 ・・・まだ全く説明も受けぬまま柳とか言う敬語を喋れない人から、丁寧そうなメガネの人へと私の説明役はチェンジしたらしい。 「初めまして、さん。私は柳生比呂士です」 「ども・・柳生さん」 「何度もすみません。それでは、簡潔にお話させて頂きます」 「はい、是非お願いします」 「先ほど幸村君がおっしゃられた『キャラそのもの』についてですが、僕らは貴方の知っているテニスの王子様のマンガ。その中のキャラクターなのです。つまり、この世界の人間では無くマンガの世界の住人・・その言い方が一番正しいかもしれません」 「・・・それは貴方達がトリップして来た・・そう言うこと?」 「ええ、理解して頂けて嬉しいです。トリップしただけであれば問題無かったと言いますか、さんを巻き込む必要は無かったのですが・・・」 「必要がある何かがあった訳ね?」 コクリと頷き、柳生さんは「巻き込んでしまったこと深くお詫び申し上げます」と頭を下げた。・・・こう、ここまで丁寧にされちゃうと逆にこっちが申し訳無くなってくるんだけど・・・敬えとは言いましたけど、紳士過ぎますよ。柳生さん。 ってか、何か知らないうちにこの場の空気・・・重くなってますよ、ね?は、はははっ・・何があったんだ一体。 「実は、『一週間、異世界の少女をテニスの王子様の世界に連れ込むんだニュウ』と言われたのです」 「・・・・ご、ごめん・・・何ておっしゃいました?」 「一週間、異世界の少女をテニスの王子様の世界に連れ込むんだニュウ」 「あの、ニュウって・・・なんでしょうか?」 「・・・その、謎の生物・・本人曰く「時を司る者」の口癖ではないかと思っております」 「そ、そう・・」 「彼はこうも言っていました。『最近暇だし、一週間くらいはオイラも楽しみたいんだニュウ。一週間経ったらちゃんと少女は元の世界に戻しちゃるニュウ。そう言うわけで手段は問わないから少女を一人選んで、レッツ異世界の旅だ!・・ニュウ』・・・と」 「・・・なんて、言う、か・・・あなた達も苦労してたんだね」 私の言葉に全員一致で頷きを返した。ホント、皆・・・ご愁傷様。 「それで、さんが承諾して下さるのであれば一週間我々にお付き合い頂けないでしょうか?もちろん、安全は保障します。住・食・衣も心配無用です」 「・・・私の願いはただ一つよ。・・・無事、家に帰る。それだけ」 「そう・・ですか。仕方ありませんね」 分かっていたと言わんばかりに柳生さんは薄く微笑み、「皆さん、他の方を探しましょう。時間はかかっても」そう景気づける様に言った。それに皆、仕方無いと言うように頷く。 「悪かったな、付き合わせちまって」 「残念じゃが、お別れじゃ」 そう言ったのは意外にも黒子に銀。・・・・こいつら・・・。 「一つ!」 「「「・・・・?」」」 私は叫ぶように言った。 「私の願いはただ一つ。無事、家に帰る。良い?無事、家に帰れれば良いのよ。帰れれば!」 「「「・・・」」」 「あー!もぉ!分かってよ!付き合ってあげるわよ!不幸な少年達に!一週間後無事に家に帰れる。だったら一週間付き合ってあげる。運良く、こちとら春休みで暇してたしね!」 ビシッと黒子に人差し指を向け、「どうよ、満足?」そうハッキリと言ってやった。 「ハッ、強気な女は嫌いじゃねーぜ」 私を迎えたのは、不敵な笑みと誰かの「よっしゃ!」と言う声だった。 |
・・・ニュウ。